江戸時代に置かれた銀貨幣鋳造所(銀座)に地名を由来する中央区銀座は、明治時代に文明開化を象徴する町として銀座煉瓦街が建設されて栄えてきました。現在の銀座8丁目付近で芸妓能楽師に因んで称された金春(こんぱる)芸者で賑わった幕末からの花柳界が、明治政府高官などの贔屓により新橋花街として江戸時代以来の柳橋(現・台東区)と共に「柳新二橋」と称し発展し、昭和中期の最盛期を経て今も中央区築地にかけて10軒以上の料亭と数十人の芸者を擁しています。東京を代表する地域ブランドのショッピング街として、大繁華街として、また夜の高級な社交の場として今に至っており、各所に老舗の飲食店や和洋菓子店などが数多く点在しています。
「刀を預かる留守居茶屋」から鰻屋へ
竹葉亭は1866年(慶応2年)に現在の東京新富町で剣術道場士学館に通う武士の刀を預かる留守居茶屋として創業しました。
その後は1876年(明治9年)の「廃刀令」により、「刀を預かる留守居茶屋」を辞め酒や鰻を焼いて売り出したのが始まりです。
竹葉亭が鰻屋を始めたのは武士が刀を持てなくなった、時代の移り変わりが激しい頃だったと言えます。
今回訪れたのは銀座店ですが、本店は銀座木挽町にあり、関西方面にものれん分け店が存在します。
文豪に愛された鰻
この竹葉亭は有名な文学作品に名がでてくるお店なのです。
永井荷風の「断腸亭日乗」に銀座店がしばしば登場するほか、夏目漱石や泉鏡花などの作品にもその名が出てきます。
「ハハハハそうなっちゃあ敵(かな)わない。時に伯父さんどうです。
久し振りで東京の鰻(うなぎ)でも食っちゃあ。
竹葉(ちくよう)でも奢(おご)りましょう。これから電車で行くとすぐです」
夏目漱石『吾輩は猫である』より
あの有名文学に名前が載っているお店。というだけで味わいも変わってくるのではないでしょうか?
文学ファンには堪りませんね。
竹葉亭といえば「鯛茶漬け」
中に入るとテーブル席、2Fにはお座敷の席があって落ち着いた雰囲気です。
銀座の一頭地ということもあってお昼時は並ぶこともあるそう。予約は出来ないようなので要注意です。
今回はうなぎのお重を注文。
鰻はいわゆる関東風蒲焼きで蒸してふっくらした味わいです。美味しいです。自分の語彙力のなさが悔しいですが。
竹葉亭といえば「鯛茶漬け」が代名詞らしいので(私はその日はご飯が食べたかったのです)
そちらも是非チェックしてはいかがでしょうか?
幕末の激動の時代から今に至るまで、いろいろな時代を見てきたお店だと思うと感慨深いものがあります。
そしてさまざまな文化人に愛され、今もこうしてなお、様々な人に鰻を竹葉亭は提供しています。
そんな竹葉亭の鰻を味を確かめに行かれてはいかがでしょうか?
———-竹葉亭 銀座店 基本情報———-
創業年
・創業1866年(慶応2年)
営業時間
月~金 11:30~14:30(L.O)
月~金 16:30~20:00(L.O)
土・日・祝 11:30~20:00(L.O)
住所
東京都中央区銀座5-8-3