若鶴酒造と日本初のボトラーズ事業者 T&T TOYAMA / 富山 砺波市 1862年創業 (文久2年)

富山県西部(呉西:呉羽山より西の地域)で砺波地区の砺波(となみ)市は、1954年(昭和29年)に東礪波郡砺波町が旧・砺波市となり、昭和中期2回の同郡1村・西礪波郡1村一部編入を経て、2004年(平成16年)に東礪波郡庄川町と合併し現市となりました。砺波平野の散居村(さんきょそん)の美風景や毎年5月連休開催のチューリップフェアで知られ、豪雪地帯に指定されています。7世紀前半に朝廷から賜った利波評(評は郡、ひょう/こおり)で8世紀半ば頃に礪波/砺波と表記され、居住した古代部民の鳥取部が鳥網(となみ)で鳥を捕獲した土地との地名由来説もあります。チューリップ球根・水稲種子籾は全国一の生産高で、となみ野米・里芋・庄川柚子・大門素麺・スパゲティ(ボルカノ)・清酒・ウイスキー等の特産品があり、市内には老舗の和菓子店・食品店・食品小売店・割烹旅館・酒蔵などが残っています。

1862年創業、北陸最古のウィスキーメーカー 若鶴酒造

油田駅から徒歩2分ほど、新高岡駅から車で20分ほどの場所にある 若鶴酒造。1862年(文久2年)に、砺波郡三日市町(現・高岡市福岡町三日市)の豪農であった久次郎氏が、加賀藩より免許を受けて酒造りをはじめたことが始まりです。祖業である日本酒造りに加え、戦後の米不足の最中・1952年(昭和27年)にウィスキー製造免許を取得し、ウィスキー造りも始められています。

私は地域ものがたるアンバサダーの富山アンバサダーに選んで頂いており、若鶴酒造さんは6月の訪問時にお伺いしました。お話が面白すぎたので、先に記載しておきますが、超長いです。前半戦は若鶴酒造さんのお話、後半戦は若鶴酒造5代目が立ち上げた日本初のボトラーズ事業者である T&T TOYAMAさんのお話となります。日本発の愛されウィスキーが続々と誕生するであろう場所にお伺いでき、とても楽しい滞在となりました。

ということで、まずは前半戦。若鶴酒造の三郎丸蒸留所を見学です。駐車場に入ると、「ようこそ若鶴酒造へ」という看板が出迎えてくれます。

まずは大正蔵にお伺いしました。大正時代に作られたから、大正蔵なのだそう。昭和蔵・令和蔵と、時代ごとに作られた蔵があるんです。

こちらが大正蔵の中です。現在はイベントができるスペースになっています。天井の高い蔵を利用したスペース、めちゃくちゃカッコ良い。

若鶴酒造さんでは、越後杜氏と南部杜氏による酒造りを行っていた歴史があります。こちらの写真は松蔵=南部杜氏側の蔵の門かなにか。一方の越後杜氏の方々は鶴蔵をまかされていたそうです。両者で切磋琢磨して、名酒を生み出したのだそう。

こちらは大正蔵に置かれていたホーロータンク。これ1本に1万ℓ近いお酒が入るのだとか。一生かけても飲めない量ねw。

ご説明くださっている若鶴酒造5代目の稲垣さんと、↑の写真を撮る私です。

大正蔵を出入り口近くには、仕込み水を飲んだり汲んだり出来る場所があります。同じお水が、コカ・コーラ社のいろはすの水の1つになっており(いろはすは地域ごとに9つの水源を持つ)、富山で買ういろはすも源流を辿れば若鶴酒造さんの仕込み水と同じお水になるそうですよ。

という、若松仕込み水の説明文です。烏帽子岳から合掌の里・五箇山を通ってやってくる、適度にミネラルを含んだ軟水となります。

次いで、ウィスキーの熟成庫(貯蔵庫)を見学させて頂きました。SABUROMARUの文字がカッコ良い。

この日は結構暑い日だったので、定期的に屋根からスプリンクラーで水を撒いていました。ウィスキーの熟成は温度が一定である方が良いそうで、温度が高くなると温度を下げるために水が流れるようになっている、とのことでした。

という熟成庫の中を見学させて頂きました。この樽の中にウィスキーの原酒が入っています。

若鶴酒造さんでは、樽クラウドという自社システムを活用し、どれぐらい熟成しているか、何回使った樽なのか等を管理されているそうです。樽クラウドって名前が素敵ですよね。

ウィスキーに関して無知すぎるので色々と教えて頂きました。ウィスキーはバーボンやシェリー酒を造った樽を買い取り、そこに原酒を入れて熟成させるそうです。左の黒いのがシェリー樽で、右がバーボン樽です。ウィスキーといえばこの2種類の樽が基本だったそうですが、最近はビール樽・ワイン樽・ラム樽で熟成したウィスキーもあるそうですよ。

もう少しひき目で見た樽。バーボンは新樽で1度だけ作るものだそうで、作った樽をウィスキーメーカーに販売します。逆にスコッチは新樽を使わないもので、上述の通りバーボンやシェリーの樽を買うのだそう。樽は「なんのお酒を作った樽であったか」と「どんな木で作られた樽なのか」で味が変わるそうで、若鶴酒造さんでは地元のミズナラの木を使った樽も使われているそう。

ウィスキー樽は3回ほど使うのが一般的で、初回をファーストフィル、2回目をセカンドフィル、3回目をサードフィルと呼ぶそう。そのため樽は直して使い続けるのが基本ですが、現在樽を直せる方々が大手メーカーの傘下にほぼ入ってしまっており、独立系の方が少ないのが問題なのだとか。若鶴酒造さんでは地元のミズナラの木を使い、樽を作り修復できる人を育ていらっしゃいます。先々まで見据えてて凄い。

熟成庫の後は、ウィスキーを造っている三郎丸蒸留所の見学です。

入り口入って直ぐには、ウィスキー造りを始めた稲垣小太郎氏の銅像がありました。

稲垣小太郎氏は、お米が手に入らなかった戦後に、「米以外で作れるお酒を」と、焼酎造り・ウィスキー造りにチャレンジされます。この樽はかつて麦芽を発酵させていた樽だそうです。

こちらは麦芽の保管庫。ウィスキー造りに欠かせない麦芽は、ネズミが天敵なのだそう。

ということで、所々にウィスキーキャットと呼ばれる守り神がおりました。こちらも伊波の木彫り彫刻で、本物の猫ではありませんw。

醸造所の2Fに上がって、醸造の様子を見せて頂きます。

ウィスキー造りはモルトを砕いて、お湯を入れ糖化することから始まります。こちらマッシュタンと呼ばれる粉砕器です。

マッシュタンで砕きお湯を入れて糖化させた後に、その液体から固形物を取り除いた麦汁を取り出し、その麦汁に酵母を入れて発酵させます。こちらは発酵直後の様子。

こちらはそのお隣のタンク。酵母を入れた日が違うので、発酵具合が異なっています。

さらにお隣のタンク。ここまで発酵していると、凄いアルコールな感じを体感できました。

アルコール発酵させるときに利用した麹を育てていた麹室。今は利用しておらず、ちょっとしたシアターになっていました。

シアター名は、室ジェクションマッピング!

そんな麹室の扉です。歴史を感じますね。用事のなき人、出入りを禁ず、と書かれています。

中ではウィスキーの作り方を学べました。上で書いた糖化や発酵は、動画を見て覚えた作り方ですw。

昔使っていた機器も展示されていました。こちらは2018年まで使っていた麦芽を粉砕するための機械・マッシュタンです。働く機械ってカッコいいよね。

アルコール発酵させた後は、蒸留する工程に入るのですが、こちらがZEMON (ゼモン)と呼ばれる、世界初の鋳造製蒸留器となります。

一般的に蒸留器は板金で作るそうですが、板金では穴が開いたりとメンテが大変なのだそう。そこで、お隣高岡市にあった鋳造の技術を使い、この蒸留器を完成させたとのこと。

高岡は高岡銅器だったりの鋳物が有名ですよね。ルーツ的にいうと加賀前田家が高岡に技術者を呼び寄せ始まったのだとか。こういう鐘の多くを作っているのが高岡なのです。

鋳造で作った蒸留器は錫が入ることで柔らかくなる上、熱伝導が小さいため蒸留に向いているそうです。ウィスキー素人には分かっていない部分もあるのですが、世界的なウィスキー雑誌の表紙を飾る快挙だったとのこと。2019年から活用されています。

そのまま2Fの様子ですが、歴代ウィスキーのパッケージも飾られていました。一升瓶に入っているウィスキーってカッコ良いですね。

こちらは比較的最近のパッケージですね。

2Fの見学を終えて1Fへと降ります。こちらにも樽がたくさん!

樽を見学する我々。この空間にいると、我々ですら職人に見えるマジック。

樽って工芸品としてもカッコ良いですよね。

樽はサイズによって名称が違います、という説明。バレルってサイズの名前だったのね(lock stock and two smoking barrelsっていう最高の映画がありましてね)。

こちらは樽の積み方の説明。この辺りの内容をしっかり覚えれば、ウィスキー詳しい、と言える気すらしてきたw。

ところ変わって、同じ砺波市内のT&T TOYAMAさんの熟成庫に見学をさせて頂きました。若鶴酒造の稲垣さんと、モルトヤマ 下野さんが立ち上げた「日本初のボトラーズ事業者」となります。

ボトラーズの意味も教えて頂き初めて知ったのですが、ウィスキーの販売会社には大きく分けて2つの系統があるそうです。

・オフィシャル → 原酒から熟成まで全てを行う会社
・ボトラーズ → 原酒を仕入れ熟成を行う会社

の2つです。本場スコットランドでは、数多くのボトラーズがオフィシャルから原酒を仕入れ、オリジナルの熟成やブレンド商品を出しており、ウィスキーの世界を広げているわけですが、日本ではオフィシャルしか存在していなかったそうです。有名どころだとサントリーさんや、今回ご紹介している若鶴酒造さんもオフィシャルのカテゴリですね。で、そんなボトラーズ事業に日本で初めて参入したのがT&T TOYAMAさんとなります。日本各地から原酒を仕入れ、それを熟成させて発売される予定です。21年に熟成を開始し、3年後に初めての出荷があるそうですよ!

というT&T TOYAMAさんの熟成庫になります。

こちらの熟成庫は、オール木材で作られていて、夏は涼しく冬は暖かい環境が保て、ウィスキー造りに最適な環境が守れるのだとか。数キロしか離れていない三郎丸蒸留所と比べて、体感温度が全然低くってびっくりしました。

スコットランドの熟成庫と同じスタイルだそうですが、樽を置く場所は通気性の高い地肌が見える石と砂の地面になっていました。

置かれていない場所だとこんな感じです。将来的には、ここ全てが樽でいっぱいになる予定なのだそう。楽しみだなぁ。

こちらは各地から仕入れているウィスキーの原酒となります。君たちが美味しくなるんだね。

今回は、若鶴酒造さんのウィスキー・サンシャインを購入しました。

普段はロックで飲むことが多いのですが、マザーウォーターである富山版いろはすで割って飲みました。まろやかで美味しい!

おそらく過去最高に長い記事になってしまったのですが、それぐらい若鶴酒造の稲垣さんのお話が面白かったです。使い続けられる樽、その樽を守るために地域で樽造りへの挑戦、世界初の鋳造での蒸留器作り、ジャパニーズウィスキーを広めるためのボトラーズ事業への参入等々、新しいチャレンジに溢れていました。サンシャインを飲んで日々を過ごしながら、T&Tから発売されるであろう初のボトラーズ商品を心待ちにしたいと思います。

↓サンシャインウィスキーは、楽天でも購入できますよ。

 

—— 若鶴酒造 基本情報———-
〇創業年 1862年創業 / 文久2年創業
〇営業時間
・平日、土日共に見学あり。
詳しくはこちらのページをご覧ください。
〇住所
富山県砺波市三郎丸208
(公式サイト)⇒ 若鶴酒造株式会社 | 富山の若鶴酒造のサイトです。

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